誰もが持っているコンプレックスって実は、平等にあるんだと

この前の日曜ね、僕(カメラマン)とクライアント、

営業マンとプロデューサーとコーディネーター、

モデルさんやスタイリスト、ヘアメイクで撮影をしたんだけど。

 

 

 

撮影の合間(モデルのメイク待ち)に営業マンいじりになったのね。

その営業マンは自分自慢が凄いの。

「僕は海洋大卒なんですよ」

「僕は剣道2段です」とか

30前で都内に家買いました」なんかのね。

 

 

んで、クライアントが「欲しいものは全部手にい入れましたね」って柔らかいツッコミを入れて

歓談が盛り上がって、

 

 

コーディネーターさんが「あと手に入れるのは地球征服ですか」とかのツッコミをしてて。

 

 

したら営業マンの後輩にあたるプロデューサーが「子供は?」って切り替えしたら、

 

 

 

 

 

ちょっとの沈黙があってから営業マンが「子供は死にました」って。

 

 

 

 

場の空気が一気に沈んだんだけど、

そこは営業マン。

 

「4年前の話なんですけど」って自分から話始めたんですよ。

 

 

 

「『25歳で結婚して30前で大阪から転勤で東京に来て、

家買ってあとは子供だな』ってなったんですが、なかなか子供ができなくて。

不妊治療の甲斐あって2013年にようやく男子が産まれたんですよ。

 

 

子供との生活を過ごしているある時、子供がミルクを吐いて。慌てて病院に行ったら、

『赤ちゃんには、よくあることですよ』って言われたんだけど、

不安だったので病院を色々と回ってたどり着いた

大学病院の精密検査でそこの医師から重大な病名を告知されました。

 

 

 

それからは我が子が入退院を繰り返しては『元気になってくれ』って願っていたんですが、

医師からは、回復するのは難しいことや余命を宣告されたり、

病魔がカラダ中をむしばんでドンドン体内に転移してますます悪化して。

と現実から目を背けたくなる状況になっていくんですよ。

 

 

 

 

で、子供の名前をつけてもらったお寺のお坊さん(事務局の人)に相談したら

『お子さんはもう、人間界を去ろうとしています。

あの世に行く準備ができています』と言われました」って。

 

 

 

その時、営業マンを見たらテーブルの束ねた資料を手持ぶささで触っていたんだけど、

その手が震えてて。次の瞬間、顔を上げたら、泣いていたんですよ、その営業マン。

 

僕も自分の子供とリンクして、父親として聞いていたから、拭いきれない涙が溢れてきて。

 

 

涙を拭って話続けた営業マン。

 

 

 

「坊さんから話を聞いた次の日、仕事中に病院から『急変したので来て欲しい』って連絡を受けて

向かっているクルマの中で『頑張って生きてくれよ』っていう今までの気持ちでなくて

『今まで生きてくれてありがとう』っていう送りの気持ちに変わっていました」と。

 

 

 

祖父母や妻がすでに病室に集まっていて赤ちゃんである我が子を順番に抱き、

写真を撮ってまた僕がまた我が子を抱いた時、

大成(赤ちゃんの名前)は息を引き取りました」

 

 

 

 

「九ヶ月の命でした」って。

 

 

 

 

話の途中から聞いていた、クライアント他も涙なくては聞くことのできない話でした。

 

 

 

 

死の悲しみを超えた先にある笑顔にこの営業マンはたどり着いたのか、と。

だからこそ、こんなにも辛い話が人前でできたのかと。

 

 

 

 

この営業マンは、きっと誰よりも優しい気持ちがあるんだと、話を聞いていた全員が思った。